胸腔(肺のまわりの空間)に空気や液体がたまると、肺が十分に膨らめなくなり、呼吸が苦しくなることがあります。
そのような場合に行う処置のひとつが「胸腔ドレーン設置」です。 細いチューブを胸に留置し、たまった空気や液体を継続的に排出することで、呼吸状態の改善を目指します。

どんなときに必要になるの?
胸腔ドレーンは、以下のような症例で行われます。
■ 空気がたまる場合(気胸)
• 交通事故や落下などによる外傷
• 肺の損傷
• 自然気胸 など
胸の中に空気が漏れることで肺が縮み、呼吸困難を起こします。
■ 液体がたまる場合(胸水)
• 心疾患
• 腫瘍性疾患
• 乳び胸
• 炎症や感染
• 低アルブミン血症 など
胸水が増えると肺が圧迫され、呼吸が苦しくなります。
■ 膿がたまる場合(膿胸)
• 細菌感染
• 異物の迷入
• 肺炎からの波及
• 咬傷や外傷 など
膿胸では粘稠性の高い液体が貯留し、重度の呼吸困難や全身状態悪化を引き起こすことがあります。
継続的な排液や胸腔洗浄が必要になることも多く、胸腔ドレーンが重要な役割を果たします。
■ 血液がたまる場合(血胸)
• 外傷
• 腫瘍
• 凝固異常 など
出血量によっては緊急対応が必要になることもあります。
胸腔ドレーンのメリット
- 繰り返し胸に針を刺す負担を減らせる
- 呼吸状態を安定させやすい
- 継続的な排液・排気が可能
- 呼吸状態の変化に迅速に対応しやすい
特に、何度も胸水抜去が必要な症例や、持続的に空気漏れがある症例で有効です。
麻酔は必要?
胸腔ドレーン設置では、一般的には鎮静や麻酔を併用して行います。
特に動きが大きい場合や、太めのドレーンを使用する場合には、安全性や確実性を高めるため麻酔管理が有用です。
一方で、
- 呼吸状態が不安定
- 麻酔リスクが高い
- 緊急的な減圧が必要
- 費用面をできるだけ抑えたい
といったケースでは、局所麻酔を併用し、無麻酔〜最小限の鎮静で設置を行うこともあります。
特に簡易的なドレーンでは、状態によっては比較的短時間で設置できる場合もあります。
当院では、動物さんの全身状態・性格・緊急性を踏まえながら、できるだけ負担の少ない方法をご提案しています。
費用について
胸腔ドレーン設置は、
- 使用するドレーンの種類
- 麻酔の有無
- 入院期間
- 吸引管理の必要性
- 原因疾患の検査や治療内容
によって費用が変動します。 当院では、症例の状態やご家族のご希望も踏まえながら、できる限り現実的な治療方針をご相談しています。
最後に
呼吸が苦しい状態は、動物さんにとって非常につらい状態です。
胸腔ドレーンは、呼吸を助けるための重要な処置となることがあります。
「呼吸が速い」「苦しそう」「お腹を大きく動かして呼吸している」など気になる症状がある場合は、お早めにご相談ください。
札幌市白石区北郷2条13-3-20
札幌総合動物病院きたごう院
獣医師 森文彦