今回は、数か月にわたり血便を繰り返していたワンちゃんの症例をご紹介します。
他病院にてフラジール(メトロニダゾール)という抗菌薬による治療を受けており、薬を飲んでいる間は血便が改善するものの、薬をやめるとすぐに再発するという状態が続いていました。
一見すると「この薬を飲み続ける必要がある」と思うかもしれません。
しかし、
「抗菌薬で症状が良くなる=細菌感染が原因」
とは限りません。
抗菌薬と腸内環境
動物の腸内には、非常に多くの細菌が存在しています。
これらの腸内細菌は消化や腸の健康を保つうえで重要な役割を担っています。
腸内細菌のバランスが崩れた状態を「ディスバイオーシス」と呼び、慢性的な下痢や血便などの消化器症状との関係が注目されています。
フラジール(メトロニダゾール)は消化器症状を改善させることがある一方で、腸内細菌のバランスに大きな変化を与える可能性も報告されています。
そのため、症状が一時的に改善しているからといって、漫然と抗菌薬を使い続けることが必ずしも最適とは限りません。
(※抗菌薬だけではなく、胃酸を抑える薬(いわゆる胃薬)でも腸内細菌叢に影響を及ぼす可能性が報告されています。)
当院で治療方針を変更
当院ではこれまでの治療経過を確認し、抗菌薬を継続するのではなく、
・食事(フード)の変更
・善玉菌を含む整腸剤による腸内環境へのアプローチ
を行いました。
今回使用した整腸剤は「サイボミックス」です。
治療開始から1週間以内に血便は改善し、その後も抗菌薬を再開することなく良好な経過を認めています。

善玉菌を含む整腸剤「サイボミックス」とは?
サイボミックスは、複数の有用な菌(いわゆる善玉菌)を高濃度に配合した整腸剤です。
このような、生きた有用な菌を摂取することで腸内環境を整えるものを「プロバイオティクス」と呼びます。
単に便を固める薬ではなく、腸内細菌のバランスを整えることを目的として使用します。
サイボミックスに使用されている多菌種のプロバイオティクスについては、犬の消化器疾患に関連した研究も報告されています。
当院では、症状やこれまでの治療経過に応じて、食事療法とあわせて腸内環境を整える治療を取り入れています。
消化器症状に「とりあえず抗菌薬」を使わないために
もちろん、抗菌薬が必要な病気や症例もあります。
抗菌薬そのものが悪い薬というわけではありません。
大切なのは、
「なぜ下痢や血便を繰り返しているのか」を考えることです。
「薬を飲んでいる間は良いけれど、やめるとすぐに再発する」
「何か月も抗菌薬や胃薬を内服している」
「慢性的な軟便や血便がなかなか改善しない」
このような場合には、一度治療方針を見直すことで改善につながることがあります。
慢性的な下痢・軟便・血便でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
☎️011-872-7171
札幌市白石区北郷2条13-3-20
札幌総合動物病院きたごう院
獣医師 森文彦